herb

よもぎ

学名
Artemisia princeps Pamp.
科名
キク科
別名
餅草(モチグサ)・繕草(ツクロイグサ)・蓬蒿(ホウコウ)
昔から使われてきた利用効果
  • 循環機能
  • 肝機能
  • 腎機能
  • 利尿
  • 健胃・消化促進
  • 整腸
  • 便通
  • 下痢止め
  • 鎮咳・去痰
  • 冷え改善
  • 風邪予防
  • 止血
  • かゆみ止め
  • 消炎
  • 抗菌
  • 口腔ケア
  • 美肌
  • 鎮痛
  • 滋養強壮

4月に入ると暖かさで瞬く間に生長

4月に入ると暖かさで瞬く間に生長

5月上旬の採取時期は葉が柔らかくにおいも強い

5月上旬の採取時期は葉が柔らかくにおいも強い

根は残し根元の茎より上部を採取

根は残し根元の茎より上部を採取

9月下旬に淡褐色の小さな花をたくさんつける

9月下旬に淡褐色の小さな花をたくさんつける

早春の新よもぎ

早春の新よもぎ

民間薬草研究家 井澤嵯壽のひと言

よもぎは太古の昔から試し確かめられ「何にでもよく効く」といわれ、日本だけでなく、世界各地で薬草として使われてきました。私の子供の頃は、現在の熊本市東部託麻地域で「ふつ」、「血止草(ちどめぐさ)」と呼ばれており、昔から大変お世話になっています。海外では、女性の出産に関する効能が多く伝えられており、よもぎ属の学名「Artemisia(アルテミシア)」は、ギリシャ神話の狩猟と月の女神アルテミス(古くは山野の守護神、多産・豊穣の神ともされる)に由来するといわれています。「ハーブの女王様」という言葉もよく目にしますね。阿蘇薬草園では、商品にたくさんのよもぎが使われます。私の講座でも、よもぎは基本であり、全ての土台といっても過言ではないほど重要な薬草です。

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利用情報

採取時期 5〜7月
利用部位 茎・葉
利用方法
  • 飲用
    採取した茎・葉を水で洗い、陰干しにします。完全に乾燥したら、お好みで焙煎(フライパンなどで煎る)します。飲みやすくなり長く保存できます。乾燥または焙煎したものを、薬缶で煎じるか急須に淹れて、お茶として飲みます。胃腸の不調・身体の痛み・冷え・婦人科系の悩みなどに万能薬として使われてきました。
  • 食用
    熊本阿蘇地方では、餅・まんじゅう、だご汁、麺類、火焼きだご(昔の黒糖が入ったパン)、ふつ飯(よもぎ粟飯)など多彩です。
  • 浴用
    アレルギーやアトピーのかゆみ・湿疹などには、よもぎをお風呂に入れ、ぬる目のよもぎ湯につかるとよいそうです(熊本県上益城郡益城町、御船町)。
  • 塗用
    茎・葉の煎じ液を患部に塗ります。アレルギーやアトピーのかゆみ・湿疹の改善に使われていました。
  • 洗用
    口内炎や歯ぐきが腫れて痛むときは、乾燥したよもぎを濃いめに煎じてぬるめに冷してから口に含み、ぶぐぶぐやりながら痛いところに当てていると、次第に痛みが止まるといわれ、実践してみるとよく効きました(熊本県阿蘇郡南阿蘇村)。
    その他、花粉症には、乾燥したよもぎを濃いめに煎じて布でこした液で目や鼻を洗ったり、うがいをする地方がありました。
相性のよい薬草
  • 柿の葉/とうもろこしのひげ
    血圧が高いときに肩こりや後頭部が痛くなることがあります。そんなときは、よもぎ・柿の葉の乾燥したものを一緒に煎じて飲むと、効果が高いといわれています。ただし、柿の葉は、貧血・低血圧・冷え・便秘のときは飲まない方がよいとされています(熊本県玉名地方)。地方によっては、ひきおこしを加えて飲んでいるところもありました。
    その他、熊本県(阿蘇地方)と大分県(九重地方)では、乾燥したとうころこしのひげを一緒に煎じて飲む利用例があります。また、利尿効果の高い薬草(すぎな・ゆらら・えびす草など)の乾燥したものを組み合わせて煎じる例が、宮崎県(高千穂、延岡地方)から鹿児島県(都城地方)にかけて多く見られました。
  • とうもろこしのひげ+またたびの実
    心臓が悪いときは、よもぎ・とうもろこしのひげ・またたびの実(虫癭果と呼ばれるデコボコした形状)の乾燥したものを一緒に煎じて飲むと軽くなるといわれています。1.8Lの水に各1つかみづつ入れ、3分の1になるまで煎じて、そのまま、薄めて、お茶がわりになど、好みに合わせて飲んでよいとされています(熊本県阿蘇郡小国町)。
    不整脈や動悸が原因で、体を少し動かすと疲れる・体のむくみが気になるときに、よもぎ・なずな・すぎな(きささげ・とうもろこしのひげを使う場合もあった)の乾燥したものを煎じて飲む地方があります(熊本県上益城郡山都町、五家荘地方、五木地方)。
  • たらの木+とうもろこしのひげ
    肩がこる・背中が痛む・ムカムカと吐き気がある・だるい・根気がないなどの症状があるときは、肝臓が悪い可能性があります。そんなときは、よもぎ・たらの木・とうもろこしのひげの乾燥したものを一緒に煎じて飲むとよいそうです。また、肝臓病の黄疸には乾燥したくちなしの実を加えて飲むと効果的です(熊本県阿蘇郡南阿蘇村)。
    その他、福岡県(太宰府地方)では、乾燥したよもぎ・くちなしの実をすり鉢ですり、お湯で溶いて飲む家もありました。
  • びわの葉+またたびの実
    神経痛・リウマチ・肩こり・腰痛などで体が痛むときは、よもぎ・びわの葉・またたびの実(虫癭果と呼ばれるデコボコした形状)の乾燥したものを一緒に煎じて飲むと痛みが軽くなるといわれています。また、これらを焼酎に漬込んでできた液体を湿布にしたり、塗布することで痛みを和らげていたそうです(宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町、熊本県阿蘇郡南阿蘇村)。
    その他、よもぎ・すいせん(または、ひがんばなの根)を生のまますりつぶして、小麦粉・酢・卵白を混ぜて湿布にし、打身・ねんざ・腫れものなどの治療に使っていたお家がありました(熊本県熊本市東区戸島町)。
  • すぎな+はとむぎ
    アレルギーやアトピーなどの湿疹・かゆみがあるときは、体質改善としてカルシウムをよく取り、よもぎ・すぎな・はとむぎの乾燥したものを濃いめに煎じて飲むと効果があるといわれています(熊本県上益城郡益城町、御船町)。
    その他、熊本県下益城郡松橋町の農家では、よもぎ・ひきおこしの乾燥したものを煎じて飲むと効果があるといい「我が家の自慢の家伝、秘伝だ」と語っていました。
  • たらの木+とうもろこしのひげ+かきどおし
    のどがよく渇く・よく食べるが体重が減る・疲れるなどの症状があるときは、糖尿病の疑いがあります。人吉地方で開業医をされている老齢の先生に教えていただいた薬草の使い方で、よもぎ・たらの木の乾燥したものを煎じて飲むと効果的で、これに、とうもろこしのひげとかきどおしの乾燥したものを一緒に煎じて飲むとさらに効果が高まると話してくださいました(熊本県球磨郡人吉地方)。
    その他、よもぎを主に、すぎな、かきどおしの乾燥したものを一緒に煎じて飲むと、糖尿病に初期であれば効果が期待できるといわれています(熊本県阿蘇郡高森町草部)。
  • せんぶり+ひきおこし
    胃がひどく痛むときは、よもぎとせんぶりの乾燥したものを一緒に煎じて飲むと痛みが止まるといわれており、旧八代郡泉村の方は胃痛を直す神様だと語っていました(熊本県八代市)。また、潰瘍などで血便・吐血・激しい胃痛などがあるときは「色々試したがよもぎ・せんぶりの組み合わせが一番効果がある」と人吉地方で開業医をされている老齢の先生は話してくださいました。
    その他、胃痛や胃潰瘍などの激しい痛みには、よもぎ・ひきおこしの乾燥したものを濃いめに煎じて、少しづつ時間をかけてゆっくり飲むとよいといわれています(福岡県小石原地方)。
  • おおばこ+げんのしょうこ
    腹痛や下痢のときは、よもぎ・おおばこ・げんのしょうこの乾燥したものを煎じて飲むと症状が止まるといわれています(熊本県菊池郡大津町)。実践したところよく効きました。
    その他、膵臓からくる下痢には、よもぎ・げんのしょうこの乾燥したものだけでも効果があるといわれています(熊本県上益城郡山都町)。
  • あじさい+しその実・葉
    風邪の頭痛や発熱には、よもぎ・あじさい・しその実または葉の乾燥したものを煎じて飲むと、痛みがとれ、熱が下がるといわれています。特に夏風邪には効果的だと伝えられています(熊本県熊本市 旧飽託郡飽田町)。
    その他、くずの根をたたいて水にさらして葛粉を作り、葛粉・きんかん(または、みかんの皮)の乾燥したものを一緒に煎じて飲むと効果があるといわれています(熊本県熊本市 旧飽託郡河内町)。これは、漢方の処方で似た使い方があります。また、ゆず・だいだい・しょうがのしぼり汁とはちみつを加えて飲む方法も好評でした。
  • どくだみ+きはだ/ゆきのした
    湿疹・かぶれ・あせも・肌荒れをおこしたときは、よもぎ・どくだみの乾燥したものを煎じて飲みます。乾燥したものをお風呂に入れて入浴するのも非常に効果的といわれています(熊本県熊本市東区戸島町)。きはだも追加すると効果が増すといわれています(熊本県球麻郡五木村)。
    浴用に、よもぎ・どくだみ・ゆきのした・桃の葉を使う地域もあり評判がよかったそうです。
  • どくだみ+もくれん
    蓄膿症の鼻汁や鼻づまりなどで困ったときは、よもぎ・どくだみ・もくれん(または、こぶしの花)のつぼみの乾燥したものを煎じ、布でこしたもので鼻を洗い、煎じて飲むことも忘れないようにするとよいといわれています(熊本県上益城郡御船町)。
    その他、もくれん(または、こぶしの花)のつぼみ・ゆきのしたの乾燥したものを煎じて鼻を洗うと蓄膿症に効果があると自慢げに教えてくれた方がいました(熊本県阿蘇郡西原村)。
  • どくだみ+びわの葉/いちぢく
    痔が悪いとき(特に切れ痔)などには、よもぎ・どくだみ・びわの葉をすりつぶし、ドロドロになるまで煎じ込み、これを肛門に塗布すると非常に効果的と伝えられています(熊本県阿蘇郡南阿蘇村)。
    その他、天草の本渡では、よもぎ・どくだみ・いちぢくの生の葉をすりつぶし、水またはお湯を少し入れて煮詰めたものを使うそうです(熊本県天草市)。乾燥したものは粉末にして、水またはお湯を入れて煮詰めて使ってもよいようです。
  • とうもろこしのひげ
    腎臓病・むくみなどがあるときは、とうもろこしのひげの乾燥したものを煎じて飲むと非常に効果的といわれ、よもぎとの併用がよい組み合わせとのことです。
    その他、膀胱炎・血尿のときも、よもぎととうもろこしのひげの乾燥したものを一緒に煎じて飲むとよいと伝えられています(熊本県阿蘇市一の宮町)。
  • なんてん/おおばこ
    風邪などで咳がひどく苦しいときは、よもぎ・なんてんの乾燥したものを煎じて、うがいをするとよく、これを飲むのもよいといわれています。これは、全国的に一番多くみられる咳止めの方法のようです。
    その他、風邪や喘息の咳・痰がひどいときは、よもぎ・おおばこの組み合わせが非常に効果的です。1Lの水に対して、生のものは2つかみ、乾燥または焙煎したものは1つかみの量を煎じます。実際に、アレルギー体質の私は頻繁に喘息の発作を起こしていましたが、とてもよく効きました。煎じたものをうがいをするようにガラガラとやりながら飲み込み、痰が出たら吐き出します。なるべく濃いめに煎じて、温かいものを使用した方が効果が高いようです。
注意すること
  • アレルギーに要注意
    ヨモギの花粉はブタクサと同じ秋の花粉症のアレルゲンでもあり、過敏症の患者やキク科の植物にアレルギーのある人は、飲・食・浴・塗・洗の使い方に注意が必要です。
  • 日焼けを気にする方
    浴用として使う場合、入浴後は直ぐに日光に当たらないでください。メラニン色素がたくさん作られ、肌が黒ずむことがあります。
  • ※ 本サイトの情報は、阿蘇薬草園創業者の幼少時代からの経験や、熊本を中心に語り継がれてきた民間薬草の使い方を収集し、実践した内容をもとに、現代に合わせてわかりやすく編集したものを掲載しています。
  • ※ 本サイトの記述に基づいて利用される場合は、すべて自己責任の上でご利用ください。事故やトラブルに関しての責任は一切負いかねますので予めご了承ください。
  • ※ 不安な方や症状がひどい方は専門医の診察を受け、通院されている方は必ず担当医にご相談の上でご利用ください。

阿蘇薬草園日記

よもぎの収穫

6/1 月曜日 阿蘇薬草園の主役、よもぎの収穫の季節です。   今年は5月に入ってもあまり気温が上がりませんでしたので、5月中旬から収穫が始まりました。 春に芽吹いてから、ゆっくりゆっくり育った1番よもぎです。…続きを読む…続きを読む

よもぎよもやま話

「よもぎ」は、阿蘇薬草園オリジナルブレンド茶に使う中でもベースとなる、とても重要な薬草です。 阿蘇薬草園ではよもぎの栽培に力を入れていますが、一緒に応援してくださる方々のエピソードを 今回お話ししたいと思います。 &nb…続きを読む…続きを読む

基本情報

生態的特徴 多年生草本で、葉に特有のにおいを有す。
  • 国内分布:
    全国
  • 生育場所:
    日当たりのよい山地、野原、道ばた
  • 開花時期:
    9〜10月
形態的特徴 高さ50~100cm。地下茎はやや横に這い、群生することが多い。茎は立ち上がり、夏から秋にかけ高く伸び、やや木質化する。秋、茎の先に、淡褐色で小形球形の頭状花を多数穂状につける。葉は互い違いに生え(個体差あり)、羽状に深く裂けている。表面は緑色、裏面は綿毛が密生しているため灰白色に見える。
生薬名 艾葉(ガイヨウ)
生薬成分 精油(cineol / α-thujone など)、脂肪酸(capric acid / palmitic acid / stearic acid など)、タンニン(caffetannin など)、ビタミン類(arachinic acid / amylase / invertase / catalase / peroxydase など)
用途 止血、月経調整作用、去痰
出典 生薬名〜用途:国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 薬用植物総合情報データベース(http://mpdb.nibiohn.go.jp/
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